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東京高等裁判所 平成元年(行ケ)167号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願考案の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1(一) 成立に争いのない甲第二号証(本願明細書)によれば、本願考案の技術的課題(目的)、構成及び作用効果は、次のとおりであると認められる。

本願考案は盤状物用手提げ袋に関するものである(第一頁第一九行)。すし、弁当、和菓子、デコレーシヨンケーキ等の盤状の折り詰め又は箱を水平に保持したまま持ち運ぶために、従来、盤状の袋体部の対向する周辺部にテープ状フイルムを橋架けし、これを手提げ部としたものがあつたが、これは内容物の重量が偏在すると、左右に傾く欠点があり、この欠点を解決するものとしてX字形の手提げ部を取り付けることも示されていたが、これは製造工程が非常に困難であつた(本願明細書第二頁第一行ないし第三頁第五行)。本願考案は持ち運ぶときに傾く欠点がなく、かつ、製造工程が簡単な盤状物用手提げ袋を提供することを目的とし(同第三頁第六行ないし第八行)、本願考案の要旨記載のとおりの構成を採用したものである(同第一頁第五行ないし第一四行)。

本願考案を第1図及び第2図(別紙図面一参照)に基づき実施例により説明すると、実施例の盤状物用手提げ袋は底面フイルム1、上面フイルム2及び手提げ部フイルム3から成つている。これらフイルムは一枚のフイルムを原料として単にこれを折り曲げるだけで作られている。すなわち、底面フイルム1は袋体部の左右側周辺部4において折り曲げられて上面フイルム2と連続していて、さらに、上面フイルム2は左右の開口縁5において折り曲げられて手提げ部フイルム3に連続している。実施例の盤状物用手提げ袋は、このように折り曲げられたフイルムを第1図における上下の縦周辺部6において底面フイルム1、上面フイルム2及び手提げ部フイルム3(5は誤記)を融着し、左右の開口縁5の中央部の近辺に、それぞれ指穴7を設けたものである。これを使用するときは、開口縁5を左右に押し拡げて、盤状の品物を袋体部に収納し、上面フイルム2と手提げ部フイルム3(5は誤記)との間から左右の指穴7に指を入れて吊り下げる(同第四頁第三行ないし第五頁第三行)。本願考案は、前記構成を採用したことにより、盤状物用手提げ袋を一枚のシートを単に折り曲げ、打抜きと接着又はミシン縫い工程により簡単に製造でき、かつ、使用の際に傾くことがなく、品物を安定して持ち運ぶことができるという作用効果を奏するものである(第八頁第二行ないし第一四行)。

(二) 他方、成立に争いのない甲第三号証によれば、引用例記載のものは、スーパーマーケツトその他の場所において使用するに適した運搬用バツグに関するものであり(第二欄第三行ないし第八行)、実質上矩形の可撓性材料のシートを対抗する二つの側部に沿つて折りたたみ束ね、該両側部を折りたたまれ束ねられた形状に固定し、他方の二つの側部の各々に対してバツグを携帯可能とする把手部が設けられ、該バツグは空のときには実質上支持表面上にその入口部を支持表面と平行において平坦な形状となし、これによつて包装されるべき品物を実質的に平坦なバツグ上に置き又は積み重ねその後にバツグを拡げて品物を取り囲むことができるように構成されたものである(第一欄第五行ないし第二欄第一行)ことが認められる。

1 一致点の認定について

原告らは、審決は、本願考案と引用例記載のものの手提げ部は、ともに袋体部の一方の周辺から対向する他方の周辺に架けられた二枚のテープ状フイルムである点で一致すると認定しているが、引用例記載のものの手提げ部とは、テープ状ではない幅広なフイルムである伸長部の両端縁部を指すものであるから、審決の前記認定は誤りである旨主張する。

しかしながら、前掲甲第三号証によれば、引用例には「一つの望ましい形式においてバツグは空虚で平坦状態で実質上平坦な背部パネルと、背部パネル上に横たわりそれぞれ一方縁部を背部パネルの一対の対抗する縁部に沿つて背部パネルに結合されかつ該対抗する縁部間の距離の実質上二分の一の距離以下であるが少なくとも部分的にそれぞれ該対抗する縁部間に伸長している二つの前面パネルと、各前面パネルの前記結合された縁部の反対側の縁部の伸長部であつて各伸長部は少なくとも前面パネル上に後方にたたまれて少なくとも該前面パネルの幅の一部を覆うようになされている伸長部と、各伸長部内に設けられ又は各伸長部に取付けられた把手部と、背部パネルの残りの二つの縁部の各に沿つて伸長し、背部パネルの該縁部と前面パネルと該前面パネルの伸長部との対応する側方縁部とを互に結合するシーム部とを含んでいる(第五欄第一一行ないし第六欄第一一行)。」「(5)は前面パネルと前面パネルの伸長部とを結合する折り目、(6)は背部パネルの側縁と前面パネルと前面パネルの伸長部とを共に結合する熱シール部、(7)は前面パネルの伸長部に設けられた手で持つための切りこみ部であつてバツグの把手部となるものである(第八欄第二行ないし第七行)。」と記載されていることが認められる。右記載事実と引用例第1図、第2図(別紙図面参照)に示されている形状からすると、引用例記載のものにおいて背部パネルと前面パネルから構成される部分は、上面の中央部に開口部を有し、四方の縁部は結合された状態であることが認められ、これが品物を収納する部分、すなわち袋体部であると解される。そして、前面パネルの幅の一部を覆つた伸長部は、前記中央開口部の縁に沿つて左右二部からなり、袋体部の一方の周辺から対向する他方の周辺に架けられた状態にあり、その片方の側縁が開口部の縁に左右それぞれ別個に結合され、その両端が袋体部の周辺部に結合されており、袋を持つための切りこみである把手部が設けられている構成になつていることが認められ、これが手提げ部として機能していることは明らかである。

してみると、引用例記載のものにおける伸長部は、手提げ部であり、その形状は引用例第1図及び第2図から明らかなように薄く平らな長方形であるから、これがテープ状フイルムであると認められる。したがつて、前記審決の認定に誤りはなく、原告らの前記主張は理由がない。

なお、原告らは、フイルムの幅の広い、狭いの違いを問題にしているようであるが、この点において両者に差異のあることは審決も相違点として認定しているところである。

3 相違点の判断について

本願考案は盤状物を入れる運搬用手提げ袋であり、他方、引用例記載のものはスーパーマーケツト等で買い入れた種々の商品を入れる運搬用手提げ部であることは前記1(一)、(二)で認定したとおりであり、両者はその使用目的を異にしている。しかしながら、両者は共に盤状体の袋体部と手提げ部からなるフイルム製手提げ袋であることに変わりがないことは前記1(一)、(二)で認定したことより明らかであり、この種フイルム製手提げ袋がいろいろな形態の物品を収納して運搬できることも技術上自明のことであるから引用例記載のものを盤状物の手提げ袋として用い、その運搬に使用することは当業者が適宜なし得ることであつて、両者は技術分野を同じくするものであると認められる。そして、手提げ部を構成するテープ状フイルムの幅のいかんは、後記判示するように手提げ袋の水平保持機能とは何ら関係のないことであり、前掲甲第二号証によれば本願明細書には「本考案の手提げ部フイルム3は品物の重量に応じて、その幅を広くしたり(第五頁第九行、第一〇行)」と記載されていることが認められるように、フイルムの幅は手提げ部としての提げ易さ等を勘案して定められるものであることにすぎない。しかも、引用例記載のものには第2図(別紙図面二参照)で示されているように伸長部が前面パネルの幅に相当するものもあれば、前記2で認定したとおり引用例には「各伸長部は少なくとも前面パネル上に後方にたたまれて少なくとも該前面パネルの幅の一部を覆うようになされている伸長部(第六欄第四行ないし第六行)」と記載されているように、伸長部は前面パネルに対して、その使用目的に応じて幅を狭くすることができるという技術的思想を開示ないし示唆しているものであるから、盤状物を入れる袋として使用するに当たつて、手提げ部としての提げ易さ等の観点から、その幅を適宜設定する程度のことは当業者にとつて格別の創意工夫を要することとはいえない。

原告らは、引用例記載のものは伸長部フイルムの幅が前面パネルの少なくとも七〇%はないと伸長部フイルムの外側に置かれた品物は外側にこぼれてしまい、素早い収納操作という目的が達成できなくなると主張する。

しかしながら、前掲甲第三号証によるも、引用例のどこにも伸長部フイルムの幅が前面パネルの七〇%以上必要であることを窺い知る記載はなく、原告の前記主張は技術的根拠を欠いたものであつて、採用し得ない。

また、本願考案の水平保持効果についてみるに、前掲甲第二号証によれば、本願明細書には「本考案の盤状物用手提げ袋は手提げ部フイルム3と上面フイルム2が連続的に固定されているので吊り下げの力が袋体部の左右の周辺部にも分散するので、たとえ内容物の重さに偏りがあつても品物は水平に保持される(第五頁第四行ないし第八行)。」

「本実施の盤状物用手提げ袋は、このように折り曲げられたフイルムを第1図における上下の縦周辺部6において底面フイルム1、上面フイルム2および手提げ部フイルム3(5は誤記)を融着し、(第四頁第一三ないし第一九行)」と記載されていることが認められ、右事実によれば、本願考案は手提げ部フイルムと袋体部とを、袋体部の周辺部のみならず、開口部の縁においても固定することによつて、吊り下げの力を袋体部の周辺部にも分散させ、収納物の水平保持を図つているものであることが認められる。他方、前掲甲第三号証によれば、引用例には「各伸長部は(中略)背部パネルの残りの二つの縁部の各に沿つて伸長し、背部パネルの該縁部と前面パネルと該前面パネルの伸長部との対応する側縁部とを互いに結合するシーム部とを含んでいる(第六欄第四行ないし第一一行)。」「前面パネルは背部パネルにまた伸長部は前面パネルに実質上平行な折り目に沿つて結合される(第六欄第一三行ないし第一五行)。」「(5)は前面パネルと前面パネルの伸長部とを結合する折り目、(6)は背部パネルの側縁と前面パネルと前面パネルの伸長部とを共に結合する熱シール部(第八欄第三行ないし第六行)」と記載されていることが認められ、右事実によれば引用例記載のものも手提げ部フイルムと袋体部とを、袋体部の周辺部のみならず開口部の縁においても固定しているものである。してみると、本願考案と引用例記載のものはこの点において構成上の差異はなく、引用例記載のものにおいて盤状物を収納した場合も原告のいう水平保持効果は当然期待できるものであると認められるから、本願考案が格別異なつた効果を奏するものとは認められない。

したがつて、相違点についての審決の判断に誤りはない。

4 以上のとおりであつて、本願考案と引用例記載のものとの一致点及び相違点についての審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告ら主張の違法はない。

第三 よつて、審決の取消しを求める原告らの主張は失当としてこれを棄却する。

〔編注1〕本願考案の要旨は左のとおりである。

盤状の袋体部と該袋体部を水平に保持し得る手提げ部とからなるフイルム製手提げ袋において、該袋体部の上面の中心線に沿つて左右に開く開口部を設け、該開口部の縁に沿つて袋体部の一方の周辺から対向する他方の周辺に二本のテープ状フイルムを架けて、各々のテープの両端を袋体部の周辺部に固定し、左右二本のテープ状フイルムの片方の側縁と開口部の左右の縁とをそれぞれ別々に固定したことを特徴とする盤状物用手提げ袋(別紙図面一参照)。

〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。

別紙図面一

<省略>

<省略>

別紙図面二

<省略>

<省略>

(他は省略)

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